ボロボロになってなお捨てられない絵本【絵本と色3】

2011.10.17

今日ご紹介する絵本は1993年にほるぷ社から発行されたもので、
現在では絶版となってしまった『あか あお きいろ、色いろいろ』です。

ではなぜ、あえてご紹介するのかといえば、
子どもが3歳頃までに購入した絵本の中で、
この本がもっとも(わが子には)愛された一冊だからです。

画像ではわかりづらいと思いますが、
見るだけでなく触って楽しむしかけ絵本になっていて、
もうボロボロです。。。


作者はクヴィエタ・パツォウスカー。
1928年にチェコのプラハに生まれ、
お父さんはオペラ歌手、お母さんは外国語の教師という家庭で
小さい頃から本と絵と音楽に囲まれて過ごしたといいます。


それはそれは美しい【赤】を使うことで知られていて、
そこに【補色の緑】を組み合わせるパターンが多いのですが、
子どもの絵本にありがちな
「ただキレイな色だけを寄せ集めた」ページはほとんど見当たりません。
【濁った色】や【無彩色】などもふんだんに取り入れられています。


最初に購入する時、
実はちょっと迷ったのを覚えています。

「濁った色には興味を示さないかな?」

「とくに明確なストーリーがあるわけでもないし、
しかけ絵本といっても、ただめくるだけの単純なもの。
それなのに3,200円(1993年初版本発売当時)もするなんて、
無駄にならなきゃいいけど…」


明らかに日本の絵本とは異なる色づかいのこの絵本、
皆さまはどう思われますか?


私は、今回コラムでご紹介するにあたり久しぶりに手にとってみて感じました。
「色はエネルギーである」と。


たとえば、赤が赤として存在するためには、
他の違った色が同時に存在していなければなりません。

言い方を変えれば、世の中がぜーーーんぶ赤だったら、
赤はもはや、赤としての個性も魅力もなくなってしまうのです。

この絵本の中では、赤は濁った色や無彩色に引き立てられ
同時に他のいろいろな色を引き立てています。

人間の世界でも【十人十色】というように、
ひとりひとりが違った色(個性)だからすばらしい。


そんなことを、理屈抜きで感じさせるようなパワーをもったこの絵本、
やっぱりこの先も、捨てられそうにありません。



いつもお読み頂きありがとうございます。
感謝申し上げます。

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