《対談:住×色彩4 Part?》真っ赤な絨毯・明るい紫の絨毯

2006.12.23

《対談:住×色彩4 Part?》真っ赤な絨毯・明るい紫の絨毯


桜「では、2人めの尊敬する人物をご紹介ください。」

安「ミノルヤマサキ(1912〜1986)。彼は日系2世なんだけれど、学費を稼ぐためにアラスカの鮭の缶詰工場で働いたり、瀬戸物の包装などの仕事をしながら、大学の建築学科を主席で卒業した人なんだ。
その後、ニューヨーク大学の大学院(夜間)で修士号まで取得して、4度もアメリカ建築家協会のワードを受賞している。」

桜「恥ずかしながら、名前を聞いたことがあるくらいです。どんな建物を設計した人なんですか?」

安「【画像:左および中央】は“ウェイン大学マグレガー記念会議センター”という、デトロイトにある建物なんだけど、大学院時代にアメリカ一人旅をした時に行ったことがあるんだ。(アメリカ一人旅のお話は《コラム1》でご紹介しています)
詳しい住所も分からず、プアな英語で道を聞きながら・・・やっとのことでたどり着いた。」

桜「やっとのことでたどり着いた建物の印象は、どんなふうだったのですか?」

安「まず、真っ赤な絨毯。これは今でも鮮明に思い出せるくらい目に焼きついている。
真っ白なインテリアに、真っ赤な絨毯と黒いバルセロナチェア。無駄な装飾はなく、洗練されたデザイン。
当時の僕は学校で“機能重視”の教育を受けていて、色をうまく使うという発想は皆無だった。
ミノルヤマサキは形でいろいろ装飾することなく、色をうまく使うことによって印象深い空間を作り出しているんだ。実際の空間に身を置いてみると、そのことが体感できるよ。」

桜「先生のおっしゃるとおり、空間の色は“体感”するものですよね。
写真で見るのと、現地に行ってその中に身を置くのとではまるで違う。」

安「ミノルヤマサキは、テロで倒壊してしまったワールドトレードセンターのロビーも設計した人なんだ。【画像:右】
ワールドトレードセンターも、ロビーには明るい紫の絨毯が敷かれていた。ものすごく綺麗な色だったよ。」

安「日本のインテリアには自然の色合いが多く、彩度の高い色を使うことはほとんどないんだけれど、歳時などには色があるよね。今僕は“日本の色”にとても興味があるんだ。
もっと勉強しないと、と思っているよ。」

桜「私も今回の対談では、ミノルヤマサキのお話を伺うことができて勉強になりました。
自分の専門以外の人物に目を向けることも、時には必要ですね。思わぬ発見がある。
ありがとうございました。」

【2006年9〜10月 記】

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