《実りの色3》黄蘗色(きはだいろ)
2007.10.24
《実りの色3》黄蘗色(きはだいろ)
◆京都の秋はモミジ(紅葉)が赤く色づくイメージがありますが、東京の秋はイチョウ(銀杏)が黄色く色付きます。そこで「銀杏色」というものが日本伝統色の中にないものかと探したのですが、伝統色としては銀杏色という色名は存在しないのです。
◆今回のグリーティングカードに使用した家紋は「陰陽二つ銀杏」です。銀杏は宋(中国)から日本に伝わったもので、古くから長寿・繁栄のシンボルとされてきました。徳川家康の祖先の紋が、銀杏紋だったという説も残っています。(家紋に関する参考文献『日本の家紋入門』楠戸義昭著/幻冬舎)
◆次にこのカードに使用した色ですが、こちらは「黄蘗色(きはだいろ)」と呼ばれる緑みを帯びた鮮やかな黄色です。聞き慣れない名前かもしれませんが、日本伝統色の黄系統の色名の中では、とてもポピュラーなものです。
◆黄蘗は日本の山地に自生するミカン科の落葉高木で、その樹皮の内側は鮮やかな黄色をしています。樹皮から溶け出す染料で染めた紙や布には強い防虫効果・殺菌効果がありました。
◆確認されている最も古いものでは、奈良時代に写経された経典がこの黄蘗染めの紙(黄蘗紙)に書かれていました。
◆布に対しては単独で黄色に染めるために使われた例は少なく、もっぱら藍との掛け合わせで青緑や緑を染めるために使われました。