『こんにちはあかぎつね!』絵本の色3…心理補色の話
2006.12.23
【『こんにちはあかぎつね!』絵本の色3…心理補色の話】
今日は「心理補色」の話をしましょう。
では、早速ですが実験です!
1、左の画像をクリックして大きくしてください。
2、黄色のちょうちょをじーっと見つめてください。(ちょっと目がチカチカするかもしれませんが、目の中に黄色を映しこむ要領でゆっくり10まで数を数えます)。
3、右側の白い余白部分に目を移してみると……紫の(光のような)ちょうちょが、浮かんで見えてくると思います!
これは残像(ざんぞう)と呼ばれる現象で、残像として見えてくる色のことを「心理補色(しんりほしょく)」といいます。
ドイツの詩人・文豪ゲーテが発見したと言われているこの現象そのものを、絵本にしてしまった作家がいるのです。エリック・カール氏。私が尊敬している絵本作家の一人です。
ゲーテは著書『色彩論』の教示編で生理的・心理的な色彩現象について述べており、独自の色相環を創案しています。
右の画像がゲーテの色相環です。(こちらも先ほどの実験がうまくいけば赤の部分が緑に、オレンジが青に、黄が紫に見えます。色相環上で正反対の位置にある色が心理補色です。)
『こんにちはあかぎつね!』というタイトルなのに、表紙のきつねは緑色。
もうお分かりですね。
そうです!そういうことなのです!
皆さんが先ほど実験して頂いた要領で読み進めていく絵本です。
ストーリーはシンプルかつ明快。かえるのぼうやのお誕生日にいろいろなお友達がお祝いに来てくれる。それが緑色をした「赤ぎつね」であり、黄色い「紫のちょうちょ」です。
専門的なことはさておき「残像」という色を見る体験は、子どもだけでなく大人にとっても驚きです。
「わぁ…」「あっ、見えた!」「へぇ〜」と楽しむための絵本です。
※『こんにちはあかぎつね!』(作者 エリック・カール/訳者 さの ようこ/偕成社)比較的大きな書店であれば、子どもの絵本のコーナーで入手しやすい本です。
※エリック・カールの代表作といえば『はらぺこあおむし』。手作りの色紙をコラージュ(切り貼り)して制作する手法は、エリック・カールのすべての絵本に共通しています。